WORKS
作品

下町の灯り 第一集
普通の人生ほど、忘れられない。
町工場、八百屋、時計店、食堂、駅のホーム。
どこにでもある街で、どこにでもいる人たちが、それぞれの人生を生きています。
言えなかった言葉。忘れられない約束。何気ない日常に残された、小さな温もり。
大きな事件が起こるわけではありません。
それでも、誰かの人生に触れることで、自分の歩いてきた道を、ふと振り返りたくなる。
そんな八つの物語を収めた短編小説集です。
収録作品 — 八つの物語
止まった扇風機
町工場に残された、動かなくなった扇風機。父と息子の間に積み重なった年月が、静かに浮かび上がります。
八百屋のレシート
下町の八百屋で手渡される、一枚のレシート。その裏に書かれた短い言葉が、誰かの一日をそっと変えていきます。
三分遅れ
下町の時計店にある柱時計は、いつも三分遅れています。長い年月を刻んできた時計を通して、父と息子の間に残された思いが、少しずつ浮かび上がります。
古い台所
使い込まれた台所には、そこで暮らした母と息子の時間が染み込んでいます。何気ない場所に残る、忘れられない記憶の物語。
手紙を書かない人
下町の小さな文具店。手紙を書き続ける女性と、書くことをためらう女性。言葉にできない思いと、誰かを待つ時間が、そこには流れています。
ホームの最後尾
毎朝、同じ駅のホームに立つ男性と、一人の女性。変わらない朝の風景の中で、男性の心に芽生えた小さな思い。その行方を見つめる物語です。
小さな軍手
下町の小さな町工場。父親は、息子が幼い頃に使っていた小さな軍手を、今も大切にしまっています。その軍手には、言葉にできなかった父親の思いが残されています。
音だけが残る
下町から、長年響いていた町工場の音が消えていきます。変わりゆく町の風景の中で、二人の胸に残る、言葉にできなかった思い。消えた音の向こうに、かつて二人が過ごした時間が浮かび上がります。